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【開催レポート】Deep Time Walk @ 峰の原高原

Art in Suzaka ~これもアートなんかやぁ~

11月5日(日)、信州アーツ・クライメート・キャンプの一環として「Deep Time Walk」を須坂市の峰の原高原にて行いましたので、レポートをお届けします🌍👣

開幕前夜

Deep Time Walkとは、イギリスで開発されたプロジェクト。46億年の地球史を、4.6kmの道程として歩きながら体感し、地球で起きた様々なイベントを学ぶことで、私たちが生きる現在地を捉え直す試みです。

イギリスで、プロジェクトの開発者と共にDeep Time Walkを体験して以来、何らかの形でアートを織り込めないだろうかと考えてきました。

移住後すぐ、信州アーツカウンシルとの協働で企画が立ち上がり、高山村在住の舞踊家・鈴木彩華さんにお声掛けすることに。

峰の原高原観光協会にも多大なご協力をいただく中、4.6㎞のルートや、舞踊にする地球イベントの検討を重ね、頭を悩ませながら地球史の「語り」を執筆する日々。どうなることやら想像もつかぬまま、当日を迎えました。

晴天の峰の原に、佐久や東京からも46億年の旅人が

この日は、一年で最も美しく槍ヶ岳に夕陽が落ちる日。紅葉シーズンも重なり、カメラマン達で賑わう晴天の高原に、8歳〜還暦まで、定員15名の方が「46億年の旅」に集まってくださいました。中には、佐久や東京から足を運んでくださった方も。

出発前に確認したことは、「今、空気を思い切り吸い込めるのも、地球に酸素が生まれたから-その匂いが嗅げるのも、木々が見えるのも、鳥のさえずりが聞こえるのも、地球は匂えて、見えて、聞こえる場所だから」ということ。

私たちの日々の当たり前を形作ってきた、地球が歩んできた道程を辿る旅に、いざ出発です。

100mが1億年、人間の一歩が50万年になることを伝えると、小声で「50万年、50万年」と呟きながら歩く方も。8歳の古生代大好き少年は、溢れる知識とエネルギーで最初から大人達を驚かせます。

地球の誕生から生命の誕生まで:月と生命の舞

まず訪れるビッグイベントは、「地球の誕生」と、それに続く「月の誕生」。最初の舞踊ステージです。月の様に白い衣装に身を包んだ彩華さんが白樺の木立を背景に踊り始めると、その幻想的な風景に静寂が訪れました。

木立の中に消えていった月を見送った一行は、「水の誕生」や「原始海洋」の誕生等に出会いながら、ついに約38億年前の「生命の誕生」に辿り着きます。

緩やかな坂道を登り終えると、小さな泡が湧き出るような音が。音に合わせて泡の様な震えを帯びた舞が、最初の生命、バクテリアや古細菌誕生の場面を描き出しました。

自然と湧き上がる拍手に包まれながら、彩華さんの顔に弾けた笑顔が、生命の力強さとも重なったよう。一行も足取り軽く、歩を進めます。

大陸の誕生から氷河期まで:光合成の舞

「プレートの誕生」や「大陸の誕生」を経て、根子岳を一望できる開けた高原を歩いている頃、遠くに小さな蠢めく何かが。カラフルな何枚もの布を手に舞う様子が描き出すのは、約29億年前の事件、「光合成の開始」です。

大地と、それを見下ろす山と、踊り。後に、この風景が忘れられないと言ってくださった参加者も多く、太陽の光を身に浴びて生き抜く舞に、一同が釘付けになりました。

道程のちょうど半分を過ぎた頃、光合成によって酸素の増えた地球には、数世紀程続く「氷河期」が訪れます。

その後やってくる「真核生物の誕生」では、ボディワークを通して細胞内での共生の様子を体感。弱肉強食ではなく、共生によっても進化してきた生命の有り様に触れました。

真菌類の誕生でまさかのコラボ:「みほのパン」による地球パン

残り約1/3。15億年程前に起きた「真菌類の誕生」では、須坂市地域おこし協力隊の宮澤美穂さんが作ってくださった、チーズ味の「地球パン」が登場。

酵母菌によってパンやチーズが食べられるのも、この時に真菌類が生まれたから。参加者達はサプライズに顔をほころばせながら、もぐもぐと小腹を満たしました。

カンブリア爆発からホモサピエンスの誕生まで:光と色の舞

その後、「有性生殖の開始」や「再度の全球凍結」等を経て、大笹街道を抜けた先に、激しい音楽が響き渡ります。多様な動きと貫くような目力で、緊迫感溢れる舞が描き出したのは、6億年前の「エディアカラ・カンブリア爆発」。

この時を境に、生き物に目が生まれ、世界に光や色、多様な形や動きが溢れ出しました。

鮮やかな力強い舞で、全パフォーマンスが締めくくられると共に、ここから生物が凄まじい勢いで進化の道を辿ります。

「植物の陸上進出」に次ぐ「動物の陸上進出」、「昆虫・森林の誕生」。そして史上最大と言われる「大量絶滅」。その後訪れた「恐竜の時代」と「再度の大量絶滅」が、100m(=1億年)ごとに怒涛のように巻き起こりました。

そして迎える、「ホモサピエンスの誕生」と「人新生」。

4.6㎞の最後の6㎜(=6000年前)で歴史が文字によって刻まれ始め、たったの0.2㎜(=200年前)で人類の影響が地球全体を覆うようになったことを、軽い疲労感に包まれた身体全体で感じます。

200年(0.2㎜)/46億年(4.6㎞)の近代を見つめ直し…

出発地点に戻ってきた一行は、46億年の旅路を思い返しながら、心と身体の感覚に焦点を当てつつ、一番心に残ったことを共有。

たったの200年で、化石燃料の使用や人口増加、戦争等により地球への多大なインパクトを生んでいることを始め、「遺伝子の水平伝播」(有性生殖以前の生殖方法)があれば人類がそれぞれの違いによって争うことはなかったのではないか…という意見など、自然とトピックは気候変動や戦争の話に。地球の辿った道を歩んできたからこそ、現代の課題の切実さが身をもって感じられた瞬間でした。

と同時に、ダンスパフォーマンスを始め、峰の原高原の美しい自然の中で感じる、生の実感のような感覚を、多くの方が共有してくださいました。私達の身体の物質や五感、欲求等、その多くが、これまで生きてきた生物や、地球環境に由来していることを実感したからこそ、より遠くの視点から私達自身を眺めることができたのかもしれません。

いわば、私たち自身が、地球史の生きた遺跡でもあり、46億年の偶然が重なり合ってできた歴史が、今の私達を形作る必然になっていることを確認しあいました。

46億年=4.6の時間を共にした15人の間には、自然と温かく寛容な雰囲気も生まれ、別れを惜しみながら、アートプロジェクトとしては初となるDeep Time Walkが幕を閉じました。

今後も様々な形で開催予定です!

今回テーマとして掲げていた、「More-than-humanの視点を取り入れることで、日常の見方・感じ方・考え方に風穴を開け、生の在り方の可能性について考える機会を作る」という点にも、少し近づけた気がしています。

わたし山際は、これからも様々な形で、アート&エコロジーにまつわるアートプロジェクトを企画していく予定ですので、ぜひお気軽にご参加いただけたら幸いです✨

イベント詳細

日時:2023年11月5日(日)13〜16時
場所:峰の原高原
定員:15名
料金:無料
申込:要予約

語り・ガイド:
 山際真奈(アートメディエーター)
 古川広野(星のソムリエ®)

ダンスパフォーマンス
 鈴木彩華(舞踊家)

主催
 信州アーツカウンシル(一般財団法人長野県文化振興事業団)
 令和5年度 文化庁文化芸術創造拠点形成事業

共催
 峰の原高原観光協会

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